身長差

「む。」
「なんだ、どうした?」

急に後方を歩いていた蜜柑が足を止め、前を歩いていた自身も自然と足を止める。
彼女は口元に手を当て、考えるような仕草をした。

「棗って、いつからそんなに背伸びたん?」
「は?」
「初等部の時はそんなに変わらんかったのに!」

むー、と頬を膨らませ不満そうな彼女に、少々理不尽さを覚える。
男と女であれば、体格差が出るのは当然だろう。

「はぁ……馬鹿か、お前」
「なっ……うちは真剣なんよ!」
「年月が経てばそりゃ伸びるだろ。俺は男で、お前は女。差が出るのは当たり前だろうが」

確信を突いてやれば「う。」と言葉に詰まる蜜柑。

「で、でも、うち、それはなんかちょっと嫌や……」

かと思えばシュンと、寂しそうに俯いてしまった。
何がそんなに不満なのだろうか。

「棗とどんどん差が出来ていくのが、嫌なんよ。まるでうちだけ、置いてかれてるみたいで……」

ぽつりぽつりと胸中を呟く。
徐々に潤み始めた大きな瞳が本音だと悟らせる。

「───蜜柑、」
「ぅ……なに?」
「俺は絶対にお前を置き去りになんてしない」
「なつ、」
「それに、この差は別に俺とお前の距離じゃねえだろ?」

俺の言葉に、今度は瞳が大きく見開かれる。
そして納得したのか、嬉しそうに笑った。

「え、へへ……そうやんな。ありがとな、棗」
「……ったく。ほら、行くぞ」
「うん!」

ぐず、と未だ少し涙目ながらも、漸く調子を取り戻した彼女。
不満そうに頬を膨らませたり泣いたり、かと思えば笑ったり。
だから彼女は、見ていて飽きない。
手を差し出せば、自然と握り返してくれる。
漸くこの関係になれたのがつい最近だと思うと、身長の話など小言だ。

例えこの先、また身長が伸びて、彼女との差が広がったとしても。
この手を離すことは絶対に有り得ないだろう。


Fin.
***
棗さん→178cm
蜜柑ちゃん→160cm
公式らしいです。心優しいフォロワーさんに教えてもらいました。
柏も身長が欲しい。
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