Love and warmth

「っ、……はぁ……蜜柑」


夜。いつも通り夕食後に風呂に入り、風呂から上がった頃に蜜柑が部屋に訪れる。そしていつも通り消灯時間まで各々好きな事をして過ごすのだが───今日は金曜日。つまり明日は休み。彼女はどう思っているか知らないが、俺にとっては”そういうコト”だ。
今日もまた半ば強引に彼女を部屋に泊まらせ、夜更けまで”そういうコト”───まあ、言ってしまえば情交だ。抵抗する彼女をやんわりと説き伏せ、組み敷き、自身の腕の中で乱れる彼女に見惚れながら愛を囁く。
恋人として付き合うようになってからというもの、幾度となく身体を重ねてきた。最初は初めての経験に戸惑っていた蜜柑も、最近では素直に身を委ね、求めてくるようになった。とは言っても、初々しい事に変わりはないが。


「ん……」


長く痺れるような快楽からやっと頭が冴えてきた所で、心地良い彼女のナカからゆっくりと自身を引き抜く。欲望を溜めた薄い膜を抜き取り、ゴミ箱に処理する。本当は彼女との間に隔たりなんて1mmも作りたくはないが、学生である今は流石に自重する。保護者と他数名が煩いのも分かっているし、何より彼女のためだ。
彼女の身体もしっかりと清めてパジャマを着せ、俺もスウェットに着替えベッドに戻ると、既に蜜柑は起き上がっていた。幾分か落ち着いたようだ。


「身体は大丈夫か?」
「あ……うん、へーき」


心配しているのが伝わったのか、蜜柑は嬉しそうに答えた。それを見て内心でホッとする。何も無いのならそれに越した事はない。


「身体、きれいにしてくれてありがとうな。いつも」
「こんくらい、男として当然だろ。気にすんな」


ぽんぽんと頭を撫でてやれば、照れくさそうに「えへへ」と笑う。口では言わないが、本気で可愛いと思う。惚れた弱みとはこの事を言うのだろう。
ベッドに潜り込み、蜜柑の横に寝転がる。「ほら」と腕を広げると、彼女は目を瞬かせた。


「えーっと……」
「寒いだろ? 来いよ」


そう言ってやれば、途端に顔を赤くさせる。さっきまで抱き合ってあんなに愛し合っていたというのに、今更何を恥ずかしがるのか。


「嫌なのか?」 
「い、嫌ってわけじゃあらへん、けど……」 
「けど?」
「ぅ……」 
「蜜柑?」


気まずそうに目を逸らし、俯く。



「く……くっついて寝るのはええねんけど、その、……凄くドキドキしてるの、棗に、聞こえてしまうやん……」 



思考が一瞬止まったかのようだった。
嗚呼、こいつは本当に、どうしようもない。───俺も。



「……ッふ、バーーカ」
「な……バカって、」
「バカはバカだろ」
「なつ……!」
「んなの、俺だって同じだ」


ぐいっと蜜柑を引き寄せ、腕の中に閉じ込める。逃げられないように、強く。


「なつ……ドキドキして、」
「悪いかよ」
「ううん。うちと一緒や………」


ギュッと、彼女からも腕が回される。それを感じ、腕の力を強める。愛おしさのあまり、抱き潰してしまいそうだ。


「ふふっ暖かい」
「ああ」


そんなやり取りをしているうちに、段々と睡魔が襲ってきた。彼女の心地良い匂いと温もりに誘われたようだ。 


「起きたら、どっか行くか?」
「ううん、何処にも行かんでええよ。2人で居れたら、それで」


特別な事は必要ない。
大事なのは2人で同じ時間を共有出来る事。


「なつめ、おやすみ。……大好きや」
「おやすみ、蜜柑……愛してる」


Fin.
***
うちのなつみかんは布団に居ることが多い。
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